Where is the Motivation?
古橋宙征 モチベーションの旅

意図しない状態こそ、モチベーションの常態【前編】

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Guest

ウェルブレイド株式会社 代表取締役 高尾 恭平さん

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M3-1. ウェルブレイドの取り組み

 

キャリアラボ 古橋:この企画では、起業家の皆さまの取り組みやエピソードを、「モチベーション」をキーワードにお伺いしています。進行としては、テーマをダイレクトに聞くのではなくて、まず現在の活動、次いでバイオグラフィを追う感じでモチベーションの上がり下がりなどをお聞きしながら、最後に私の方から、改めてモチベーションについてお伺いしたいと考えています。

 

ウェルブレイド 高尾さん:はい、承知しました。ところでこんなフランクな格好で来ましたけど、大丈夫ですか?

 

古橋:大丈夫です。高橋名人(※)のお友達の高尾さんですから、大丈夫です。

 

高尾:業界的になんとなくこういう感じということで、ご容赦ください(笑)。

 

古橋:まずは、現在の取り組みからお聞かせいただけますでしょうか。

 

高尾:去年(2015年)の11月に、ウェルブレイドという会社を立ち上げました。ゲームの世界では、Good play! とか、Good game! あるいはGG! と言って相手を褒めるんですけど、その中にWell Blade!(よくやった!)という頻繁に使われる表現があって、これが社名の由来です。

 

本当にいいプレイにもWell bladeを送るし、自分が勝った時にも挑発的に「よくやったね」的に送ったり、結構、深い言葉だなと。この感情をもっと皆に知って欲しいという思いを込めています。

 

会社の目的ですが、ゲームというものは、もっとみんなが熱狂できるものだと、僕は信じていて。それがまだ文化的に低い位置にあり、昇華されていない。そこに照明を当てたり、市民権を得たりしていくためのビジネスをやりたいと思っています。

 

(※)ファミリーコンピュータ全盛期に、ゲーム名人として子供たちの人気を一身に集めた。現・コナミデジタルエンタテインメント所属。「ゲームは1日1時間」。

 

 

M3-2. ゲームの魅力を包括的に伝える

 

高尾:僕らの強みは、ゲームに詳しい人材が集まっているところです。その力でゲームの、 —後ほどご説明するe-Sportsという言葉に置き換えますとー e-Sportsのプロモーションを、支援させていただく。あるいは「こういうゲームなんだけど、どうすればユーザに伝わるだろう」とご相談いただければ、何らかの競技性があるものなら、企画からイベント、配信等、ワンストップでお任せいただけると思っています。

 

古橋:会社の構成はどんな感じなんですか?

 

高尾:5名でやっています。僕がCEO・副社長で、ゲームセンターで出会った、谷田という人物が社長。谷田はもともと格闘ゲームのグループを趣味で作っていて、そこにはセミプロぐらいのレベルの選手が10名くらいいます。彼らの出演番組をもう4年くらい、週1で生配信しているので、スタジオもあるし、ゲストの呼び方や演出・配信の方法論など、ノウハウが蓄積されているんです。

 

 

M3-3. 世界最速『ストリートファイターV』大会の開催

 

高尾:そこで私たちのビジネスの一例なんですが…今月(2016年2月)の18日に『ストリートファイターV』が出るんですよ。

 

古橋:おお、それはビッグイベントですね、高尾さんにとって。

 

高尾:はい(笑)。もちろん世間的にも「ついに来たか!」という。それでカプコンさんとも、公式契約で色々取り組ませていただいています。ゲームって発売前の2〜3日間に、オンライン上でβテストをやることがあるんですよ。その期間だけは対戦できる。「そこで大会をやったら面白くないですか」とご提案して。去年(2015年)の12月に、ウェルブレイド主催で、世界最速のストリートファイターV大会を行って、大きな反響をいただきました。

 

そう言った感じで、イベントの企画や集客、エントリー募集、Webサイト作成、会場を押さえて設営するまで丸々全部やります、さらにニコニコ動画などで配信しますというのが、最たる例です。これはビッグタイトルですけれども、PCのゲームでも、スマホのゲームでもいいですし、包括的にも部分的にも様々なことができますということを、皆さんにお伝えしているところです。

 

 

M3-4. ゲームとは、何だろうか?

 

古橋:なるほど、大変興味深い取り組みです。高尾さんにとって、ゲームとはどういうものなんですか?

 

高尾:うわー、すごい。深すぎてそんな…難しいですよね。僕もわからないです。コンピュータ相手のものなら、一つは暇つぶし。そして乗り越える達成感。その先に何があるかというと、人と競って、自分の方が強いかどうかとか、それを認められたいとか…だんだんソーシャルゲーム、そしてs-Sportsの世界に近づいてくるんですけど。

 

ゲームというものを突き詰めていくと、人間が作ったものなんだけど、人間がプレイする以上、そこにドラマが生まれて、感動することができる。僕はそこだと思っているんです。その一連の流れがもう発生しているんですけど、それが伝わらない。認知させる力がまだないんですね。

 

凄いスーパープレイをしている人たちを、僕は「イチロー」と思っています。ゲームの世界にもイチローが沢山いるのに、彼らは苦しい生活をしたりしている。でも「感動」が認められれば、いずれ花開く時代がくると思っていて。その環境を整えたいですね。その人たちに仕事が回るように企画を作るとか。

 

古橋:高尾さんをそういう風に駆り立てるモチベーションというのは…

 

高尾:2014年に、ラスヴェガスで行われたゲームの世界大会に行ったんです。その時の体験が大きくて。みんな泣いてるんですよ、ゲームの試合で感動して。僕も、隣のよくわからないアメリカ人と抱き合っちゃったりして。そういう世界があるんですね。

 

サッカー好きな人がスタジアムに行って、声枯れるまで応援して、っていうのはみんな知ってるじゃないですか。もうそのレベルにまで来てるというのは、肌感で実感しました。ならばビジネス的には先手を打っておきたいし、僕個人も、そこが好きだからこそ盛り上げたいと考えた結果、今に至ります。

 

古橋:でも、例えば野球なら一億円プレイヤーが沢山いるのに対して、サッカーはいないわけですよね。そこにはスポンサーや観客の存在がなければいけない、ということになるんでしょうか?

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M3-5. プロゲーマーと、そのキャリアプラン

 

高尾:そうです、そうです。鶏か卵かの話になってくるんですよ。それで1つ、答えだと思っているのは、いわゆるプロゲーマーと呼ばれる人たちのキャリアプランを、ちゃんと出してあげたい。

 

最近気づいたんですけど、高校球児って、発言や態度がいやにしっかりしてるんですよ。普通の高校生なのに。あれは気分が律されているんじゃないか。スポーツの厳しさに加えて、プロになり、沢山お金をもらい、アナウンサーと結婚して…みたいな、キャリアプランが見えていますから。

 

これ、実はむちゃくちゃ重要だと思っていて。だったらプロゲーマーがもっとチヤホヤされるべきだし、儲かって幸せな結婚ができるんだって認知されないと、始まるものも始まらない。だから今、自社の選手たちには、太るなとか(笑)身なりに気をつけようって言ってますし、『nonno』とかで「今、イケメンゲーマーが熱い!」とかやって欲しいんですよ。まあ、例えですけど(笑)。側面から変えていく、外野から盛り上げるっていう。

 

古橋:ゲームというのは基本的にユーザが「払う」側ですよね。そこで「稼ぐ」方法というのは、どんなものが…?

 

高尾:ゴルフやテニスに近いんですけど、まず、大会の賞金。大きいものだと「億」とか、先日の格闘ゲームでも4千万とか。勝てば全然イケますというのが一つです。あとはスポンサー。コントローラーやマウスを作っているメーカーがバシッとロゴを入れて。何々所属、みたいな感じで…

 

古橋:そこはスポーツと一緒ですね。

 

高尾:そうです。それからちょっと有名になってくると、ゲームで勝っているメンタリティを教えてくれということで、講演やイベントへの出演、連載、本の執筆といった収入がある選手がいます。その3つでしょうか。

 

古橋:中継による課金モデルはないんですか?TV局が放映権を買うとか。スポーツだと大きいですよね。

 

高尾:視聴者がお金を払ってファイトマネーになるというのは、今のところないですね。大会参加費がプールされて賞金になるっていうモデルはあるんですが。現状、配信は無料です。基本的にゲームは「大元を作っている」人が存在しているビジネスなんですよ。

 

例えばボクシングは誰が作ったものでもなくて、そこにビジネスが発生していく。でもゲームの場合は、それを作っている人たちの利益を最大化するという目的で動くので、配信料を取って還元する必要がないんですね。むしろみんなに見てもらって、このゲーム楽しいよ、と思ってもらうのが一番です。この辺りがちょっと難しいところですね。

 

 

M3-6. ゲームが生む「感動」や「ドラマ」に取り組む

 

古橋:お話を伺っていると、同じ「ゲーム」でも、色々な意味がありますね。ソーシャルゲームのゲームと、テニスやサッカーのゲームは、実は違う。高尾さんは後者の意味で「ゲーム」を使っていますよね?

 

高尾:そうです。野球好きの彼氏が彼女を誘ったら、彼女がハマりました。別れても、野球を好きでい続けました…みたいな話があるじゃないですか。あれ、ズルイなと思っていて。もっとゲームでもそういうドラマがですね、自然発生してしかるべきだと(笑)。

 

古橋:最近は、ゲームが「体験を共有する」というイベントになってきた感覚もあります。今のゲームシーンを、高尾さんはどのように捉えていらっしゃいますか?

 

高尾:うわー、それも難しい問題ですね。話が広がりすぎて、哲学的になっちゃうかもしれない。僕の専門領域だけで話すと、行き着く先は、やはり「感動」や「ドラマ」。それを求める流れが来ているんじゃないかと。

 

なぜそう思うのかというと、僕が5年くらい関わったソーシャルゲーム業界は“pay to win”、つまりお金を払えば勝てる世界なんですよ。それだけ聞くと賛否が分かれちゃうんですが、僕はいいモデルだなと考えていて。

 

格闘ゲームの世界では、弱い人は全く勝てない。虐げられていくんですね。そんな中、ある程度お金を払ったり、時間を買うことで、人より強くなれる、勝てると言う世界ができた。ある人達にとっては「こんな機能待ってました」とか「ゲームで勝つってこんなに気持ちいいんだ」という実感になったわけです。

 

ただ、そういうゲームが乱立してくると、じゃあまた新しいゲームでお金を使って強くなるの?っていうことになってくる。すると「やり込めば勝てる」「使った時間を裏切らない」ゲームが出てくるだろうと。深く考えて色々試した方が勝てるような、お金じゃない世界がまた流行ってくる。そこにベットするなら今だということで、この会社を立ち上げたということはあります。僕が小学生の時に『ストIIブーム』があったように、そこにまた回ってくるのかなと。

 

古橋:「小学生の時以来、ずっと集中力がない」という自己評価をお聞きしています。でも、ゲームはやり込まれていたわけですよね。集中力とモチベーションには密接な関係もあるのでお聞きしたいんですが、高尾さんはどういった目的でゲームをやってらっしゃったんですか?

 

高尾:そうですねえ…自分の中では、ずっと繋がっているんですけど。まず前提として、子供の頃、理由はわからないけどゲームがうまかったんですよ。コンピュータの動きを読む。製作者の意図を読む。格闘系でもマリオでも、なんでもうまかった。その得意なことを、人にぶつけたかったんです。承認欲求を満たしてくれるのがゲームで、いいカッコしたいという原動力が、集中力になってたんだなと思います。

 

 

M3-7. ゲームとの馴れ初め

 

古橋:そこで、今日に至るまでのバイオグラフィを、キャリアやモチベーションなどと絡めながら、順次お伺いしていきたいのですが。

 

高尾:愛知県の名古屋出身です。4つ上の兄貴や、年上の従兄弟が、ファミコンやってるのを見ていた記憶がうっすらありますね。僕の時代はスーパーファミコンになっていて、小学生低学年から、時間制限の目を盗んでは、怒られるまで延々やってました。いつだったか、ポケモンのアニメの画面のピカピカで病院に運ばれた子供さんがいたじゃないですか。あのずっと前に、自分はそれを発症していて…。

 

古橋:そんなに昔に。

 

高尾:ええ、あのニュースを見て「あれはあの時の自分か!」と。暗いところでずーっとゲームやっていて、親が来たら全身にブツブツができていて、病院に運ばれて…っていうのを覚えてます。それから、親が厳しくなったのかな。

 

古橋:怖いですね。

 

高尾:(笑)後は、小学生の頃、結構いじめられてて。より内向的にゲームと見つめ合うようになったというのが根底にあります。負のオーラが強かったかなあ。部活もやってなくて、学校終わったら真っ先に帰ってゲームをやる。ゲーセンに通う。親がピアノ教師なので嫌々ピアノをやっていたんですが、記憶はゲームとピアノだけ、というくらいゲームばかりやってました。

 

古橋:それほどハマったゲームの魅力というのは、どこにあったんでしょうか?

 

高尾:ゲームって達成欲求が組み込まれているので、そこにまんまとハマったのも大きかったかな?ゲーミフィケーションという言葉がある通り、人参があって、それが食べられると嬉しい。そうするともっと大きい人参が先にあって、アレも食べたい!って。大人になって始めた女性も、それでハマったりしますね。

 

あとは、優しく可視化してくれるのもいいなって。算数のドリルを10時間やったからどうだって、別にないじゃないですか。でも、ゲームはレベルが上がる。そうすると「たまに辛いのもいい」ってなってくるんですよ。今では、それを専門に設計する職人もいるくらいです。気持ちいいストレスの与え方、っていう。

 

古橋:そして中学生時代、性格的に変わったということをお聞きしています。

 

 

M3-8. 中学、高校。変わったこと・変わらないこと

 

高尾: 中3の時に、隠れているやつにも光を当てる、みんなを遊びの輪にどんどん入れるという、ヒーローみたいなクラスメイトがいたんです。彼の影響で、かなり性格が変わって。トラウマを解消するスキルがあった!こうやると人に好かれやすくて、ターゲットにならないんだ!みたいなパラダイムシフトがあったんですね。でも相変わらず部活はやってなくて、真っ先に家に帰ってゲームしてました(笑)。

 

それでもう1つ、ピアノの方。家庭環境的に、習うのが当たり前だと思ってたんですけど。あまりにも嫌いで、練習を全然やらなくて。個人レッスンの先生に、ある時パーンて叩かれたんですね。「なんで練習してこないの!」って。それでカチーンと来て「辞めます!」って。

 

そこから親に直談判して、高い月謝をピアノの練習に使うくらいなら、将来、ゲームを作る人になりたいからアビバに通わせてくれと。家にパソコンもなかったんですけど、1〜2年間くらいパソコン教室に通いました。

 

古橋:中学の時点でもう、今に繋がる話が…。

 

【後編】へ続く…

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